56歳 胃がんと闘う母の記録

胃がんで胃を全摘出した母の闘病記

ストレスと胃がん、骨への転移

5月20日金曜日、私の携帯に父から電話が入りました。

検査の結果母のがんは骨に転移していて、手術して切除が不能なほど広がってしまっているということでした。

手術ができないということはつまりもう完全に回復することは不可能、できることは「延命」をするだけ。

 

骨への転移というのがどういうことなのかをインターネットで調べ、状況の深刻さがわかった私は母がいなくなってしまった未来を想像して涙を堪えることができませんでした。

家に帰ってきた夫に状況を話そうと口を開いたら、言葉にならない大きな感情の波が押し寄せてきて泣きじゃくってしまいました。

 

翌日、病室にお見舞いに行くとさすがの母も憔悴していて、何をどう話していいかわかりませんでした。

病室で一緒にいる時には普通に振舞っていた父も、テニスにゴルフに旅行、何をするにもどこに行くにも一緒の母へのこの恐ろしい死の宣告にどれほどショックを受けているか…母の両親だってまだ健在なのに…何を考えても涙が出てきてしまいます。

 

お見舞いから帰ってその晩、私は何か母を助ける方法はないか必死に探しました。

そして代替療法について色々調べるうちに、段々冷静さを取り戻してきていくつかまずやらなければならないことがあると感じました。

 

気持ちを落ち着かせ副交感神経優位にする

まず一つ目は気持ちを落ち着けること。

このような重大な告知を受けて動揺を受けない人はいません。

告知を受けた日には水さえも喉を通らなかったと母は言っていました。

これはおそらく極度の緊張状態に陥って、交感神経が優位になりすぎている状況だと思いました。

電話で話を聞いた私もその日の夕食は喉を通らなくてやっと押しこむような感じでした。これは首周辺の筋肉が緊張してこわばって食道を細めているためです。

 

副交感神経を優位にして身体の緊張を解きほぐさなければならない。

このように思いました。

 

そのために音楽を聞きながら深呼吸をする。

副交感神経を優位にする方法については検索すれば色々な方法が見つかりますが、腹式呼吸はその一つの方法です。交感神経が優位になっていると呼吸が浅くなり、身体が緊張します。

何も音がない状態で一人で部屋にいたら色々なことを考えてしまい不安になります。

ですから、クラシックなどゆったりした音楽を聞きながらそれに合わせて呼吸をすることに集中して無心になる。これが良いのではないかと思いました。

サン=サーンスの白鳥などはテンポや曲調的に良いようです。

 

ストレスは免疫機能を低下させてしまいます。これはがんと戦っていく上で良くないことです。この状況でリラックスしろというのはとても難しいですが、だからこそ意識的にリラックスできる方法を試した方が良いと思います。

 

現状を受け入れて感情を解き放つ

孫達が大きくなるのを見ていたかった、のこされた家族が心配だ、などやりたかったこと心配なことなど様々なことが胸に去来します。

5月には免疫系の数値は胃の切除前の正常値レベルまで戻っていたのになぜ!

TS-1はやらない方が良かったとか、腰がいたいと言っていたのに、腫瘍マーカーの数値が上がっていたのになんでもっと早くに転移を見つけてくれなかったんだとか怒りと悔しさも湧き上がってきます。

 

これらは口に出せば涙が出てきてしまいますが、ここで涙を堪えずにわんわん泣きながら吐き出したほうがいいと母に言いました。

病院のカウンセラーでもいいし、父でも私でもいいから、心に溜め込んでいるものを話してすっきりしよう。聞いたら私たちも泣いてしまうかもしれないけど一緒に泣きながらでも前に進もうよと電話で話しました。

大泣きすることもストレス解消につながると言います。

不安や怒りを口にして外に出してしまえばそれはもう自身の中にはとどまらず流れでていって霧散します。そしてその気持ちを昇華することで前に向かうエネルギーが湧いてくると思うのです。

 

私自身も上記のようなことを電話で母と父に話したら頭で考えていただけよりも、腹の中に落ちたとでも言いますか、より自然に現状を受け入れることができていました。

 

土曜以降まだお見舞いにはいけていないのですが、母にあったらマッサージをしたり手をつないだり、ぎゅっと抱きしめてあげたいと思っています。直感ですが、スキンシップもまた母を癒やすのではないかと思うのです。

 

今日生きていることにことに感謝して、これからやりたいことを考える

現状を受け入れた私の心に湧き上がってきたのが、今日生きていることに感謝する気持ちです。

ああ今日も生きてる、動けてる、今日は何をしようかなとやりたいことを前向きに考えることが明日につながるような気がします。

 

病院でもう延命治療しかできないと言われても、その予想に反して元気に生きている人というのは実は結構いると思うのです。

その人達はきっとそれぞれ色々な工夫の末に医師の予想を覆して健康を取り戻したと思うのですが、まず前提として諦めている人に未来は来ない、諦めないことが未来への第一歩だと私は確信しています。

 

つい身辺整理のことを考えてしまうと母は話していますが、そんなことは考えなくてもいいのです。だってもし事故などで急に死んでしまったらそんなことはできませんが、周りがなんとかするんです。自分が死ぬ準備なんてする必要はないんです。

 

いつかやりたかったことを今すぐやろう!

私は母にそう言いました。

母は娘たちと母娘3人で旅行がしたかったと言いました。私たちは母娘だけで旅行をするということはしたことがありませんでした。

最後のチャンスかもしれません、でもまたできるかもしれません。またの機会が訪れたときには、初めて3人で旅行した時にはあんな状態だったねって笑って話せるといいなと思います。

 

前向きになって、がんを治すための色々な手段を知ったら、もう母が死ぬなんてことは絶対にありえないような気がしてきました。

 

がんが全身に蔓延して西洋医学で根治が不可能である以上、このがんとはもう付き合っていくありません。

 

食事を整えたり運動をしたりと身体的なアプローチからコンディションを整えるのは元々得意な母ですが、それでもがんになってしまったのは間違いなくストレスが原因だったと思います。

胃の切除後も母のストレスをなんとか軽減してあげなければということはずっと考えてきたのですが、母をストレスから開放させるためにもっと踏み込まなければと感じています。

母自身がこれまでの思考方法やこだわりから脱却できたなら、このがんはたとえ切除できなくても共存してやっていける、小さくなっていってくれると思うのです。

心理療法的なアプローチももっと詳しく調べてみなければと思います。