56歳 胃がんと闘う母の記録

胃がんで胃を全摘出した母の闘病記

闘病を振り返って①治療についての反省点

約1年の母の闘病を振り返ると、やはりもっとこうであったらとか違った決断をしていればと思うことがあります。

これを振り返ったところで母の命が戻るわけではありませんが、失敗してしまった人がなぜ失敗したと思うのかその原因を知ることは今現在またはこれから闘病する方にとっては有益ではないかと思います。

一人でも多くの方が癌から寛解されることを祈って、ここにあえて患者の娘の立場として治療について疑問に思ったことや反省点などをまとめていきたいと思います。

 

治療についての疑問点・悔やまれる点

1.胃の摘出は本当に必要だったのか

母の胃がんは胃の幽閉部、つまり胃の上部の方にできており、下部ではなくこの部分にできてしまうとリンパに近いのでリンパ節や他臓器への転移があるかもしれないので少しであっても胃を全摘しなければならないと言われました。

しかし胃を摘出すると通常の食事を取るのが難しくなります。食事に制限が出ることは大変にストレスになりますし、食事療法などを行う際にも消化の問題で制約があるため難しい部分が出てきます。

今だからわかることですが、原発巣の癌を切除すると他の臓器への転移リスクが逆に高まります原発巣の癌があるうちにはなりを潜めていた他の部位のがん細胞が、ボス的な存在である原発がんがいなくなることで活発になるのです。

また一方で、正しく免疫が働くことでがん細胞の増殖を抑えたりがん細胞を消し去ることも可能です

とはいえ、正しく免疫を働かせるためには全身の血流を良くし(血液サラサラ)、免疫が活発に活動するような良い心理状態になる必要がありますが、がんが発覚してからすぐにそのことを認識してできる人というのはそうそういないのではないかということを考えると、切除しないでそこからどんどん拡がってしまう可能性も否定できず難しいところです。

 

2.胃切除後のTS-1は使うべきではなかった

胃の全摘出手術の際に脾臓にもがん細胞があることがわかり脾臓も摘出、また摘出後の病理検査によってとリンパ節にもがん細胞があったことがわかりました。そのような状況でしたので、再発予防のために抗がん剤をやるとのことでTS-1の投与を行いました。

しかしこの点については強く思いますが、TS-1は使うべきではありませんでした

TS-1の奏効率が約10%であることは投与前の医師の説明によってもわかっていましたが、状況を鑑みてやらざる得ないということでした。その件については当時記事を書いています。

vs-canser.hatenadiary.jp

 

TS-1投与後、その副作用で白血球関連の数値が軒並み大幅に下がってしまいました。

2015年1月下旬から投与を始め、母が腰痛を感じ始めたのが翌月の2月。骨転移が発覚したのは5月でしたが症状からいって2月にはもう骨にがん細胞があったと考えられます。後に別の病院の医師にこの流れを説明したところ、2月にもう再発があったのならばそれは胃を摘出した時には見つからなかっただけでもう既に多少のがん細胞が骨にあったと考えられると指摘されました。

母のように原発巣が摘出されても体内の他の部位にがん細胞があることが心配される場合、TS-1をやることで効果があれば良いけれど効果がなかった場合には免疫力を弱めてかえって体内にあるがん細胞を活発化させるのではないかと思いました。

しかもTS-1のがん細胞を殺す作用が効いても効かなくても食欲不振や吐き気などのつらい副作用は出るのです。この薬は効果の上がる可能性の割に副作用と効かなかった場合のリスクが大きいためやるべきではなかったと今は思います。

 

3.骨転移の発見が遅くなってしまった

上の項で書いたように母は2月頃から腰痛を感じていたのに、2月に検査した時には骨転移の値が高くなかったため大丈夫だろうと3月4月とずっと激しい腰痛を訴え続けていたにも関わらず、骨転移を疑われることなく再度の検査が行われませんでした。

5月にようやく母自身が骨転移の検査をして欲しいと言って検査してもらったところ発見されましたがその時には頚椎から背骨全体まで黒い影が点々としており、もう手術で切除するといったことが不可能な状況になっていました。

これは直接的な医療ミスとは言えませんが、医師の判断ミスで間接的に母の命を縮めることになったと思います。

医師も一人の人間ですから完璧な診断などというものはありえません。

毎日多くの患者を見る中で、その中の一人の命をその患者本人自身より真剣に考えるなんてことはありません。

自分の命を守るための判断は自分でしなければならないと思い知らされた出来事でした。

がん患者さんでもし通常にはない腰の痛みを感じたら、骨転移を疑ってください。早期ならば処置ができます。骨のがんで死ぬことはないと言われていますが、非常に痛みが強くつらいです。どうかなるべく早くに気づいてください。

 

4.担当医が合わないと気づいた時にもっと早くに転院を決めればよかった

この骨転移の発見の遅れが私たち家族の担当医への不信感の始まりでしたが、この医師はどうも状況を説明するにも患者の心を思いやってくれない心ない発言を繰り返していたようで、病院に行くたびに患者である母も付き添っていた父も落ち込んでいました。

担当医への信頼感を失ってしまった時から、病院を変えたほうが良いんじゃないかなと私としては薄々思っていたのですがそれを強く勧めることもできず結局転院したのは8月に入ってからになりました。

精神的に落ち込むたびに母は元気を失っていきました。

そのことにより体内の免疫が働きにくい状況になり、次の検査で悪くなってまた落ち込むという悪循環でした。結果を見て落ち込むくらいなら検査もしないほうがマシだと思いました。

この先生なら信頼できるとか、この人に会えば元気が出ると思えないのならば、診療を受けてもかえって治癒の妨げになりますから迷わずさっさと転院したほうが良いです。

 

5.鍼灸師などがん治療を行う民間療法家をもっと早くに訪れてみるべきだった

8月に入り、骨転移の痛みや胸水による息苦しさの症状が辛くなってきてから、自由が丘にあるがん治療のお手伝いをされている聡哲鍼灸院を訪れました。

聡哲鍼灸院のことは7月の頭頃に知ってはいてとても気になっていたのですが、民間療法とか胡散臭いと思われるかなあなどと躊躇しているうちに毎週病院で精神的苦痛を受けて悪化する羽目になってしまいました。

実際に行ってお話を聞いてみると、聡哲先生の病院で処方される薬の作用や先生の行われてる治療についての説明はとても論理的でわかりやすく、信頼に足るものでした。

元々薬嫌いで自己免疫力で治したいという気持ちだった母のサポートをしてくれるコーチのような存在の専門家が必要だとは感じていたのですが、聡哲先生は正にその役割にぴったりの人でした。

治療院なんて行ってみてもし合わないと思ったら2回め行かなければいいだけの話なのだから、ピンと来たのならば躊躇せずにもっと早くに行くことを勧めておけばよかったと思いました。

がんとの闘いは時間との闘いです。迷っている暇はありません。

直感を信じて良さそうだと思ったものは早く試す、イマイチならやめるといった素早い判断が必要だったと思いました。

 

6.骨転移の痛みを和らげるストロンチウム89を使えたらよかった

先述したとおり骨転移の痛みは大変なもので、オキシコンチンやオキノームといった経口投与のモルヒネ系の薬がうまく効かなかったり副作用が大きかったりした母は8月中旬頃には毎日出産前の陣痛のような痛みに苦しんでいました。

痛みがひどくなってから調べて見つけた骨転移の痛みを抑えるストロンチウム89による治療というのが良さそうに思えましたが、血液の各種成分の数値が悪くなってしまっていて使ってみることはできませんでした。

ストロンチウム89は抗がん剤治療を今後行う予定のない人でないと使えないという制約がありましたが、抗がん剤はもうやるつもりがなかったのでもう少し早くにこの存在を知っていたら試してみたかったです。

 

治療に関する反省点は以上です。

次回患者本人の心の持ち方についての考察を行いたいと思います。