胃がんのリンパ節転移と抗がん剤TS-1
胃の全摘出手術後、病理検査により癌のリンパ節への転移が認められました。
ステージⅢの後期。肺や肝臓への転移がなかったのだけが少しましというところです。
がんのリンパ節転移とは
リンパ節に転移しているということは、確認できたがん細胞はすべて摘出したけれど、がん細胞がリンパ節から全身をめぐるリンパ管を流れてのどこか違うところでまた増殖を始めるかもしれません。
一旦がんを切除した後にまた癌が発生すること、これががんの再発です。元々のがんと別の場所にまたがんができることを転移といいます。胃がんでリンパ節からの転移の場合、次にがんが出来やすいのは乳房、乳がんだそうです。
一度リンパ節にがんができてしまうとと全身のどこにでもがんが発生する可能性があります。こうなると、発生が確認されたら可能な場合は手術で切除、またできたら手術といった具合に最悪の場合がんのモグラ叩きのような状態になります。
再発予防のための抗がん剤
これを避けるため、がん細胞の増殖を抑えることを目的とした薬、抗がん剤を投与します。胃がんの患者に投与される抗癌剤で最も一般的なものはTS-1という薬で、母もこれを投与することになりました。他にもシスプラチンなどいくつか別の薬もあり併せて投与するほうが効果的といった記事もよく目にしたのですが、母の場合は理由はよくわからないのですがTS-1しかできないとのことでした。
抗がん剤は誰にでも聞くというわけではありません。
約10%の人に効果があると医師に言われたと母が言っていました。薬の解説のサイトでも以下のように記載されていました。
抗がん剤は副作用が強いというイメージがありました。10%の人にしか効かないのに強い副作用のある薬を飲むのはどうなのだろうと母も私も手術前は思っていたのですが、がんが思ったより進んでしまっていてリンパ節に転移してしまっている以上、現状打てる最善の手としてやるしかないと母も覚悟を決めたようです。
TS-1のサイトを見ると専門的な内容になりますが、臨床成績なども確認できます。
がんと闘おうとすると、体の仕組み、がんのメカニズム、病院のことや治療法など様々なことを知る必要があります。
病理検査や臨床成績といった言葉も専門的で急に聞いても何のことか想像がつきにくいように思います。私は最近たまたま最近フラジャイルという病理医の漫画を読んでいたのでこの辺のことも割とすぐに想像ができました。漫画だと文章だけよりもわかりやすいのでおすすめです。
フラジャイル 病理医岸京一郎の所見(1) (アフタヌーンコミックス)
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フラジャイル、今ドラマでもやってるんですよね。TOKIOの長瀬が主演で。私はドラマの方は見たことありませんが、映像のほうがよければそっちも良いのではないかと思います。
TS-1の投与とその後の経過
抗がん剤治療とはどういうものかと思っていたのですが、TS-1は経口投与なので通常の生活をしながら治療を続けられるようです。母が胃の切除手術を行ったのはがん研有明病院ですが、有明は遠いのでTS-1治療は近くの病院に通って行うことになりました。
母は幸い食欲不振や吐き気、嘔吐、下痢などの症状は出なかったようですが、白血球の数値が下がりすぎてしまいました。TS-1は通常4週投薬その後2週休薬というのを1クールとしているのですが、母の場合は早いうちに白血球数が下がりすぎてしまったため、2週投薬で1週休薬、その後また投薬再開という風に変更されました。
しかし1週間の休薬期間のあと投薬を再開したらまたすぐ白血球数が減少してしまい、どうするべきか担当医師たちも迷う状況になってしまったようで、また次回有明に行った際にそちらで診断をもらうということになったようです。
TS-1投薬治療中の生活の仕方
白血球数が減少するということは、免疫力が低下し風邪などの普段ならば大したことのない病気にも抵抗力が弱まってしまっているということです。風邪やインフルエンザの流行するこの時期ですから、人混みなどは当然避けたいところです。また、体を冷やさないように、特に首周りを冷やさないことを意識しています。
元々母は一日のうちに座っている時間は食事の時くらいという非常に活動的な人ですが、たとえ元気であっても少し動いたら少し休むということを心がけ、体力を削り過ぎないように注意して活動しているようです。
離れて暮らしている私達家族に現状できることは限られていますが、ストレスは免疫力低下につながるので、電話で愚痴を聞いたりするなどして多少なりともストレスを減らすべく話をしたりしています。何かもう少しできることがあれば良いんですけどね。
【後日談】
■2016/6/1記
抗がん剤TS-1は母には効果がありませんでした。
これから抗がん剤の投与を検討されている方は以下のエントリをぜひお読みください。
■2016/9/13記
9月1日に母が亡くなり、闘病の過程を振り返りやはりTS-1はやらない方がよかったと考えています。こちらのエントリもぜひ合わせてお読みください。
発酵食品を毎日摂って免疫力を高める
胃全摘出後、退院してから約1ヶ月が経過しました。
食べた後の腹痛はだいぶ起こりにくくなってきたようです。
母によると、
- うどんのようなやわらかいものでも速く食べるとお腹が痛くなる
- 固めの肉などでもゆっくり時間をかけて食べれば大丈夫
- きのこは少量なら食べられるけどまだ難しい
- 貝類は無理
とのことでした。きのこも本当は毎日摂りたい食品ですが、まだ無理そうです。
体に良い食品には色々ありますが、大事なのは毎日食べやすいことではないかと思います。調理が面倒だったり値段が高かったりして続けられないのでは意味がありません。
免疫力アップが期待できて毎日食べやすいものを調べていたら、これがなんとことごとく発酵食品でした。
発酵食品とは
発酵食品の解説をしてるサイトに良い説明がありました。
発酵食品とは、カビや酵母などの微生物の働きを利用したもので、身体の免疫力を高めるといわれており、私達の健康維持のためには欠かせないものとなっています。この発酵食品には、有名なところで、ヨーグルト、チーズ、納豆、キムチ、醤油、味噌などがあります。
腸内環境正常化
近頃腸内フローラという言葉が話題になっています。
人の腸内には3万種類、1000兆個もの腸内菌と呼ばれる最近が生息しています。腸内菌には人の体に有用に働く善玉菌と、悪く働く悪玉菌があります。腸内菌のバランスが善玉菌優位で保たれていると免疫力が上がり体調を崩しにくくなります。
腸内菌が良いバランスで保たれている人の腸の様子を見ると細菌類がお花畑のようなきれいな模様を描いています。フローラとは花畑のことで、腸内フローラがきれいな人は免疫系の細胞が活性化し病原菌や癌のような悪い細胞、体にとっての異物を戦う力が強いということです。
毎日食べやすい発酵食品とその効能
ヨーグルトなどの発酵食品は腸内環境を整え、免疫力を高めてくれます。また発酵食品にはその他にも様々な重要な栄養素がたくさん含まれています。
手軽に食べられる発酵食品の主な栄養素を調べてみました。
納豆(1パックあたり)
たんぱく質(7.4g):筋肉や臓器を作る
ビタミンB6(0.11mg):免疫機能を健全に保つ
カリウム(300mg):血圧を下げ、筋肉や心筋の活動を正常化する
マグネシウム(45mg):エネルギーの代謝をたすけ動脈硬化を防ぐ
鉄分(1.5mg):鉄欠乏によるめまいや立ちくらみを防ぐ
食物繊維(3.0mg):腸の健康を保ち便秘を防ぐ
ビタミンE(0.5mg):コレステロールを減らし血行を良くする
カルシウム(0.8mg):イライラを防ぎ骨や歯の形成を助ける
豆腐(絹ごし豆腐200gあたり)
たんぱく質(9.8g)、カルシウム(87mg)、ビタミンE(0.67mg)、マグネシウム(88mg)、鉄分(1.5mg)、カリウム(300mg)
味噌(味噌汁の場合)
ビタミンB12:神経の修復をする。造血作用
酵素:消化を助ける
味噌の栄養については栄養素を並べるだけでは説明しきれない効果がありましたのでこれについてはまたそのうち別記事にしようと思います。
ヨーグルト(小鉢1杯分120gあたり)
たんぱく質(4.32g)、ビタミンB2(0.17mg)、カルシウム(144mg)など
またヨーグルトは善玉菌であるビフィズス菌が取れるのが魅力的ですね。
出典:ヨーグルト - カロリー計算/栄養成分 | カロリーSlism
チーズ(明治ボーノチーズモッツァレラ1本あたり)
私はナチュラルチーズは好きなんですがプロセスチーズがどうも苦手です。毎日シュレッドチーズをパンに載せてトーストにしていますが、そのまま食べるならボーノチーズが好きなので母にもおすすめしてみました。
たんぱく質(2.65g)、ナトリウム(59g)、カルシウム(68mg)
参考:明治北海道十勝ボーノ切り出し生チーズ モッツァレラ 4本入 40g|商品情報|株式会社 明治
その他にも栄養素は書き出しづらいですが以下の食品も毎日取りやすそうです。
- ぬか漬け
- キムチ
- みりん
- 酢
- かつお節
調べてみると発酵食品てすごく色々あるのですね。
こちらも参考になります。
胃全摘手術後1ヶ月 退院後2週間の様子
退院より約二週間後、母の様子を見に行ってきました。
がんばって食べてはいるものの、やはりまだ食後お腹が痛くなることも多いようです。昼食を一緒に取りましたが、母はリクライニングのソファに座り、時々腸を動かすように体を捻ったりお腹を押したりなどしながら食べていました。
最近の様子はというと、
- 食事は1日5〜6回、1回あたり30分
- よく噛んで食べなきゃいけないけど、ゆっくりし過ぎても30分すぎると受け付けなくなってくる
- 午前2回目の食事と昼食は比較的調子がいい
- 同じものを食べても大丈夫な時とダメな時がある
- キノコは食べられない
- 基本的には何でも食べて良いと退院時には聞いた。
比企先生の本(毎日おいしく食べる! 胃を切った人のための食事)で3ヶ月〜となっているものでも食べられてるものもある
- 午前と午後と2回ウォーキングをしている
- 朝と晩と2回お風呂に入っている
ということでした。
スポーツインストラクターで体の管理の専門家と言っていい母の今気をつけていることは以下のようなことでした。
- お腹が痛くなってもがんばって食べる
→ 今はまだ体が以前と大きく変わったばかりなので、体が慣れるまで当面は痛みが起こるのは避けられない。その間に体重が落ちて体力が減らないため - 運動をして筋力を落とさないようにする
→ 体重が落ちるときは筋肉から落ちやすいから
→ 体を動かすことによってお腹が減り食欲も沸くから - 免疫力を高める食品を食べることを心がける
- 免疫力を高めるために入浴&軽い運動で体温を上げることを心がける
食後かなりの確率で腹痛に襲われるというのはとても苦痛で、食べるのが嫌になってしまうと思うのです。それでも癌と闘うために頑張って食べる母はえらいなと思います。
しかし料理好きの母でも、毎日自分のためのごはんを工夫して作りつつ、父と祖母のための普通食も作らなければならないのはかなり苦痛なようで、また最近祖母が作っても残すことが多いのがストレスになっているようでした。胃切除後の人のための食事を作るのも大変ですが、他の人の料理をもう週に何日かは宅食にするとか手を抜かないととてもずっとは続けられないんじゃないかなと思いました。
母のところに行く前日にたまたま美噌元というお店でしじみエスプレッソというのを売っているのを見つけました。しじみは肝機能回復、免疫力UPなど体にいい栄養素がいっぱい含まれているのでぜひ摂りたいところですが、貝も胃をなくしたばかりだと少々食べづらい食べ物です。このしじみエスプレッソはお湯を注ぐだけでおいしいしじみのおつゆが飲めるので手軽でいいととても気に入ってもらえました。単価で考えると少々高いので自分で買うのはちょっとつらい気がしますが、お見舞いなどに差し上げるのにはちょうどいいと思います。
価格:1,350円 |
退院後の食事と体調 参考になった本
先週日曜、前日に退院した母の様子に見に実家に行ってきました。
元々は退院後は私が実家にしばらく滞在して家事などをサポートするつもりだったのですが、母が予想していたより動けたので、普段は毎日行っている仕事もないから家事だけなら全然軽いし、子どもが色々菌を持っているから今はなるべく避けた方が良いということで3歳と1歳の子を連れて行かざるをえない私は滞在しての手伝いをやめることにしました。
お見舞い程度に訪れた実家で会った母は胃を全摘してまだ一週間ちょっとの人とは思えないくらい元気でした。顔と首が少し痩せたと思いましたが、体重減少は3キロ、ちょっと痩せた?くらいの感じです。家族以外の人にはごく限られた人にしか胃がんの話はしていないらしいのですが、おそらくこの様子なら知らない人はまさか胃を全部取ったなんて全くわからないでしょう。
退院後の母に持っていった料理
退院後の食事は一日5回くらいと聞いていました。料理好きな母ですが、私自身娘の離乳食を作っていた頃は料理ばっかりしていて大変だったので食べられそうなものをいくらか差し入れようと作っていきました。作ったのは、
の4つです。
作るにあたってはまず以下の本を参考にしました。
この本の著者の比企直樹先生はがん研有明病院の胃外科部長で、この業界では第一人者とのことです。母の内視鏡検査を担当してくれたのが偶然にもこの比企先生でした。この本には胃を切除した人のためのレシピだけでなく、胃の機能や胃を取った後どのような症状が出るかなども詳しく載っています。がんで胃を切除しなければならない人やその家族が術後のことを知るためにとても良い本でした。
食事を小分けにして食べなければならないので、軽食として食べやすいもの、栄養素的に必要そうなもの、母があまり作ったことがなさそうで私が作り慣れたものと考えて持っていくものを決めました。
毎日の鉄分摂取にレバーペースト
まずは鉄分を取ったほうが良いのでレバーを。レバーペーストは比企先生の本でもおすすめされていました。普通レバー料理を毎日食べようとは思わないと思うのですが、レバーペーストならパンに塗って食べられるので、毎日でも食べやすくて良いです。
レシピはこちらを使いました。
このレバーペーストはとてもおいしくて、多めに作って我が家の朝食用にも重宝しています。
免疫力UPに鶏ハム
がんの手術後、栄養が摂取できないと免疫力が低下することが考えられます。なるべくがんばって食べ物を食べることはもちろんですが、免疫力を上げる食材を効果的に選んでいきたいところです。免疫力を高める食材を調べたところ、鶏胸肉が良いとのことだったので、調理後日持ちしてやはり毎日でもアレンジしたりして食べやすい鶏ハムを作ることにしました。
鶏ハムは時々うちでも作っているのですが、こちらのサイトのレシピがおいしくできて好きです。
免疫力を高める食材の参考サイト
抵抗力と免疫力を高める【最強】食べ物はコノ5つ! | ナゼナニコミチ
お腹に優しい野菜のポタージュ
母は結構普通のものを食べられていたのでそこまでどろどろのものでなくても大丈夫かなと思ったのですが、コンディションが悪い日もあるかもしれないし、野菜も食べやすく煮たのばかりだと飽きるかなと思い、離乳食の時に重宝していた野菜のポタージュを2種類作っていきました。
レシピはこの本を参考にしています。
野菜のポタージュ ~1週間分まとめてつくる 毎日のからだを整える季節のスープ~
- 作者: 石澤清美
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- 発売日: 2012/09/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本では玉ねぎをバターで炒めないで作っているのですが、母の場合はむしろ積極的に少しの食事でカロリーをたくさん取っていくほうが良いのでバターを入れています。ポタージュベースに牛乳や豆乳、出汁などを合わせてアレンジができます。ポタージュベースはジップロックに小分けにして冷凍が可能なので、一度作ってしまえば後日も食べられて便利です。
退院後一週間の経過
退院翌日に会った母は元気そうに見えましたが、その後食事中に痛みがひどい日が続いたようです。大丈夫な日もあるようなので、徐々にお腹が慣れていってくれれば良いのですが。
一方、元々運動好きなので毎日ウォーキングはしているようです。動くことで食欲が湧き、食べる。また動いて消化する。食べて痛かったらやめて、またお腹が空いたら食事回数は気にせず食べられるだけ食べるようにしているとのことです。運動と食事が良いサイクルで回れば細胞がどんどん新しくなっていき、治癒も早くなりそうです。
しかし手術の後遺症で胸焼けや痛みが出るのは術後2週間から半年ということで、まだこれから先が大変そうです。痛みと付き合いながら新しい自分の体に慣れていくのは大変だろうなと思うばかりです。
胃全摘手術後の経過 退院の日まで
母からメールの返信が来たのは手術から3日めのことでした。
手術当日は父と電話をし、目は覚めているもののぼうっとした状態でほとんど話せなかったとのことだったので連絡を控えていました。手術翌日、自分も昼間はバタバタしていて夜メールしたのですが、翌日になっても連絡は来ず、一応既読にはなっているものの返信はできないようで心配していました。
手術後も連日お見舞いに行っていた叔父からは、かなり辛そうでしゃべるのも難しいみたいだと電話で聞きました。術後2日めの時点で陣痛がずっと続いているような痛みと言っていたのが手術後の痛みの壮絶さを物語っています。
ようやく来た母からのメールには、夜中痛みで何度も目が覚めてしまいつらいといったことが書かれていました。手術後一週間が経ち、痛みは日を追うごとに少しずつよくはなったようですが、昼間は調子がよくても夜はやはり痛みがきつい日が続いていたようです。
一方、意外だったのが食事のことです。手術後3日めからはもう食事を食べ始めたそうで、6日め頃に送られてきた食事の写真はごはんがおかゆなのと量が少ないこと意外は普通の食事と変わらないようでした。
また、手術後2日後くらいのまだ麻酔も多少残っていてふらふらするような状態でもなるべく動くようにと言われたそうです。母は元々動いている方が好きなたちで、この時も痛みがあってもがんばって院内を歩いていたようです。
手術後初めて電話で話したのが術後5日め。母の声は結構元気そうでいつもと変わらない感じに聞こえました。当初の様子を父や叔父から聞いたりメールだけでしか様子がわからず心配していたのですが、術後の経過がよかったため、明後日、つまり術後7日めに栄養指導が入るので退院が早まるかもしれないということでした。栄養指導が入ると退院ももう間近とのことです。そして退院のスケジュールが決まりましたが、退院は術後9日め。入院期間は短くて手術後2週間と言われていたのになんとそれより5日も早く退院することになったのです。これは嬉しい誤算です。病院で面倒見てもらってゆっくりしていればいいのにという人もいましたが、動いている方が性に合っている母にとっては許されるなら早く退院するほうがいいだろうと私には思えました。
筋肉量が多く基礎代謝の高い母は、病院で出される食事が物足りないのでおかゆを普通のごはんに変えてもらえるよう頼んで、医師の許可も出たのでごはんにしてもらったそうです。その方がゆっくり噛んで満足感も得られるからと。
母は日頃から自分の体とよく向き合っており、何をしたらどのような反応があるのか、この痛みが何の原因によるものかというのをよく理解していました。お腹が痛いと言っても術後の傷の痛みでなく牛乳を飲んだらガスが溜まりすぎたとか、背中が痛いのは横になっている時間が長いから凝り始めているからだとか。
胃の摘出手術後も、私は当初は離乳食のようなどろどろのものから始めたり、避けたほうが良い食材があったりと考えていたのですが、それは確かにある程度目安というかベースとなるものはあるのですが、基本的には食べてはならないものというのはないそうです。大事なのは今の自分の体がその食べ物を受け入れられるのか、きちんと自分の体の声を聴くこと。自分の体の声をよく聴いた上で母は手術後一週間という短い時間で、医師の許可も得た上でおかゆを辞めることができました。胃がんという重い病気になり、胃全摘出という大きな手術を受けた後も、このように日頃から自分の体をよく知っておくことによって良い経過を送ることができるのだなと感じました。
母が胃がんになった
私はこのようなブログを書きたくはありませんでした。
母はまだ56歳、スポーツウーマンでジムでインストラクターをしつつ地域のおばあちゃんたちに体操を教え、普段の食事も和食中心で甘いものもジャンクもほとんど食べない健康の塊のような人です。雰囲気的には樫木裕実さんを少しガタイをよくしたような感じです。その母ががんになったなんて、本人も私を含め家族もとても信じられませんでした。しかし、検査を進めていくうちに出てくる結果は残酷なものばかりでした。
診断結果は胃の噴門部にがんがあり、胃を全摘出しなければならないということでした。噴門部というのは胃の上部で食道とのつなぎ目のあたり。胃がんは胃の中央から下部にできることが多いらしいですが、この噴門部にできてしまうとどんなにがん細胞が小さくても胃を全摘出しなければならないということです。
胃を全摘出するということは、術後普通の食事が取れなくなってしまうということです。普通の食事が取れなくなれば、手術前と同じ体力、筋力を維持するのが難しくなります。母はなんとか胃を残すことができないか、がん研有明病院というがん専門の病院までセカンドオピニオンを求めに行きました。がん研有明病院では胃の噴門部に癌ができた場合にも胃を残す手術を行うことがあるということを知ってのことです。しかし結果としては胃を残すという選択はできませんでした。胃の中央部にもわずかながら癌の転移が見られたのです。近所の病院で撮ってもらったデータを見ただけで、近所の病院ではわからなかった胃中央部への転移がわかっただけでもさすがはがん専門の病院と言うべきです。この診断を受け、母のわずかな希望は打ち砕かれ、胃の全摘出を受け入れざるを得なくなりました。
手術は母の希望によりがん研有明病院で行うことになりました。母の手術を行うのはその筋ではとても有名な名医とのことです。そして一昨日、母の胃の全摘出手術が行われました。手術は無事成功したのですが、開腹を行ったところ胃の裏あたりにあるという脾臓の動脈近辺に転移が見られたため脾臓への転移の可能性が高い、そのため脾臓も摘出したとのことでした。脾臓というのがどのような臓器か知らなかったのですが、調べてみたところ簡単に言うと免疫系の機能を担う臓器ということでした。
がんのステージは3c、ステージ4の直前です。本当に信じられないことですが、このような状態にも関わらず母に全く自覚症状はなく、腫瘍マーカー検査でも数値は高くなかったのです。密かに進行するがんの恐ろしさを思い知らされます。
胃全摘出という大きな手術ですが、それでも合併症などがなければ術後2週間で退院できるということです。実家は父と母、父方の祖母の3人暮らし。祖母は本人は認めたがりませんが認知症の気があり、同じく認知症持ちの母方の祖母も近所に住んでおり、その二人と毎日関わり手助けをしていたことが母にかなりの負担とストレスになっていました。私は子どもがいるとはいえまだ幼稚園にも行っていない幼児が二人、会社勤めもしておらず比較的身動きが取れるので退院後実家にしばらく滞在し母のサポートをすることにしました。
このようなブログは書きたくはありませんでしたが、母の今後の食事を研究したりがんと闘うために調べたこと、今後調べるであろうことの記録をのことすことはひょっとしたら同じがんにかかる可能性もある自身と妹のためになるかもしれないし(できればなってほしくないけれど)、既に同じ病気にかかった方への参考になるかと思い記事を書いていくことにしました。
一昨日手術をした母からまだ連絡がないのが心配ですが、ひとまずこれまでの経過を書き、母からの連絡があったら公開することとしたいと思います。
(2015/11/21記)
【後日記】
2016年9月1日に母が亡くなりました。
今この記事を読まれている方はおそらくこの記事を書いたときの母や私と同じ立場、がんが見つかったばかりの方が多いものと思われます。
最後に亡くなってしまった人のブログを見るのは辛いものがあるということは私自身も感じて承知しております。
しかしながら、母は寛解には至りませんですが、がんが見つかったばかりの方ならまだこれからの過ごし方で治癒は十分に可能です。
これから闘病に当たられる方とそのご家族にはぜひ逃げずに現実を直視し、私たちの闘病を一つの糧としてこれからに備えて欲しいのです。
以下の記事をまずはお読みいただくことをおすすめします。